第3回幼児日本語教育研究会2020

第3回 KJLTIA主催 幼児日本語教育研究会2020 (Kids Japanese Education Annual Conference 2020) のご報告

イベントページでも告知しておりました「第3回幼児日本語教育研究会2020」が11月29日(日)日本時間13時より開催されました。

毎年、日本で開催していた本研究会ですが、今年はコロナウイルス感染拡大の影響を受け、初めてのオンライン開催となりました。

オンライン開催ということで、今まで参加したくても出来なかった海外在住の方々が参加できるようになったという点では、大きな一歩だったと思います。

今回の研究会では、多くの方に登壇していただくことができまして、とても興味深いお話しをたくさん聞かせて頂きました。

今回の登壇パネラーのお話しは、以下の5つのテーマでした。

1. 日本語イマージョン小学校について(オーストラリア在住、上級レベル幼児日本語教師)

学校の先生や保護者からの聞き込み調査からの考察が行われていて、とても興味深い内容でした。こちらの小学校には、オーストラリアでいう一般的な普通学級と日本語と英語のバイリンガル学級の2つのスタイルがあるそうです。学年によってクラス数は変わりますが、4年生クラスでは普通学級1クラス、バイリンガル学級4クラスで、やはり英語と日本語のバイリンガル学級の方に生徒が集まっているとのことでした。オーストラリアは、第二外国語教育が盛んな国ですので、普通学級でも第二外国語教育として日本語の授業があります。今回、第二外国語教育を受けている普通学級の子ども達の日本語力と日英バイリンガル学級の子ども達の日本語の会話力を比べたお話しも聞けました。普通学級で日本語を第二外国語として習っている子ども達は、日英バイリンガル学級の子ども達に比べれば日本語に触れる時間は少なく、日本語で話しかけると簡単な挨拶くらいは日本語で返答してくれるが、それ以上は英語での会話に切り替わってしまうとのこと。しかし、日英バイリンガル学級の子ども達は、休み時間の間も子ども達同士が日本語で会話ができるほど、日本語が自然に出て来るという点では、大きな差が出ているようでした。また、親御さんたちのアンケートや実際に指導している教員へのアンケートなどもまとめてくれて、知りたいと思っていたことが知ることが出来て、とても充実した内容になっていました。オーストラリア大陸を横断しないといけませんが、一度、視察に行きたいと思っています。

2. 異文化交流コミュニティーについて(スペイン在住、上級レベル幼児日本語教師)

日本語という語学学習にフォーカスするだけではなく、さまざまな活動を日本語を使いながら体験してみようという内容で企画しているプロジェクトのお話しでした。今まではどこの国でも育児サークルや異文化コミュニティーと言えば、自分の住んでいる地域のところに参加するというのが当たり前だったと思います。しかし、その当たり前が今年のコロナウイルス大流行により対面しての交流が困難になったということで、家庭に引きこもりがちな生活が余儀なくされています。お話ししてくれた彼女は、上級レベル幼児日本語教師であり、野外活動が大好きで、キャンプインストラクターの資格も持っている方。彼女が考えた新しいスタイルでのオンライン異文化コミュニティー。こんなご時世ですが、オンラインで出来ることにチャレンジするという意味では、面白い企画になっているので、これからが楽しみです。

3. ニュージーランドの小学校にてロックダウン中の教授経験(NZから帰国したばかりの日本在住、初級レベル幼児日本語教師)

世界各国においてロックダウン中の学校は、先生たちが急遽オンラインに授業を切り替えたり大変だったかと思います。そんな中、実際にNZの小学校でオンライン授業に切り替えて日本語を教えていた先生がいました。今回の研究会では、ロックダウン中にどんな授業をしていたのか、オンライン授業を行う上でどんなことに注意したら良いのかをお聞きすることができました。実際に行っていたアクティビティーをワークショップとして私たちも体験出来て、とても楽しかったです。Zoomを使ってオンラインレッスンする先生も多いと思いますが、こういうところに注意した方が良いよっていうポイントをワークショップの中でも教えてくれましたし、写真などを見せてくれながらわかりやすく伝えて頂けました。また、実際にニュージーランドの学校で子ども達が大盛り上がりしたオンラインを使ったクイズアプリを、研究会用に作成して頂き、参加者みんなでクイズに挑戦という体験もできて、盛り上がりました。

4. あなたに合ったスタイルの日本語教室って何ですか?外国語としての日本語教育について(アメリカ在住、プロフェッショナル認定幼児日本語教師)

アメリカで日本語を外国語として現地の子ども達に指導している先生からお話しを聞くことができました。KJLTIAの幼児日本語教師養成コースも終え、100時間以上の指導経験も経て、指導者認定試験にも合格しているプロフェッショナル認定幼児日本語教師である彼女は、色んな肩書を持った方で、熱意を持って子ども達の日本語教育に当たっていることをお話ししてくれました。彼女の生徒たちは、「Japan」は知っているけれど「日本(にほん)」というワードを知らない。「Japanese」は知っているけれど「日本語(にほんご)」というワードを知らないという子ども達にゼロから日本語を教えているということや、彼女のお教室の3つのコンセプトについて熱く語ってくれました。「ご縁を大切に」しながら、子ども達が成長し、どこかである日本語を聞いた時に、「あ、これはあのお教室で習った」、「あ、これはM先生が教えてくれた」って思い出してくれたら良いなという彼女の思いに共感しました。そして、彼女が研究会の参加者に問い掛けた「パッション」という言葉に、どの人も背中を押され、来年に向けてまた色々とやってみようとやる気が出たという声が多かったです。

5. 学びのユニバーサルデザインを子どもの日本語教育に取り入れてみよう & オンライン教育プラットフォームについて(オーストラリア、KJLTIA代表理事)

こちらは、私がお話ししたことなのですが、今年は2本立てとなりました。まず1つ目が「学びのユニバーサルデザイン」についてお話ししました。ユニバーサルデザインというコンセプトを学習に焦点を当てたというのが「学びのユニバーサルデザイン」になります。同じ学習内容を学ぶのに障害や言語的・文化的・認知的な背景があるという理由で取りこぼされてしまったりすることのないよう、全ての子ども達に同じ教育を提供していこうという考えであり、障害や言語的・文化的・認知的な背景がある子ども達であっても、普通学級で他の生徒たちと同じように学習に参加できるようにするためには、何が必要なのか、どういうアプローチの仕方があるのかという点で、学びのユニバーサルデザインのフレームワークについてお話ししました。

もう1つは、オンライン教育プラットフォームのご紹介です。今年に入ってから対面授業やレッスンができずにオンラインに切り替えた先生方が多く、オンラインレッスンをやっているけれども試行錯誤しているというお話しも色んな先生から聞いていたこともあり、皆様に少しでもお役に立てればということで、オンライン教育プラットフォームのご紹介と体験ワークショップをしました。今回ご紹介した教育プラットフォームは、幼児というよりは小学生向けのモノになるのですが、使い方によっては年中さん、年長さんあたりでも使えるのかなと思います。このプラットフォームは、先生たちが自分で教材を入れることも出来ますし、レッスンに合わせたオリジナル教材を作ることもできると思い、ご紹介しました。研究会では、実際に参加者の皆様にオンライン教育プラットフォームにアクセスしてもらい、ワークシートの課題を実際に体験してもらったりしました。

2020年は、コロナウイルスによる波乱な年となりましたね。そんな1年でしたが、間もなく新しい年を迎えます。

今年はある意味、ターニングポイントとなる年になるのではないか・・・って個人的には思っています。来年から、教育の在り方が変わっていき、教育のデジタル化、オンライン化が進んでいくことでしょう。

今回の研究会の参加者のほとんどがKJLTIAの幼児日本語教師養成コースを受講してくれた方でしたが、子どもの日本語教育に興味、関心を持っている方、どなたでも幼児日本語教育研究会は参加して頂けます。

そういう意味を込めて「幼児日本語教師研究会」ではなく、「幼児日本語教育研究会」にしています。

現時点で頂いている参加者からのフィードバックでは、皆さんがこの研究会に参加したことで、「同じ幼児日本語教師の活躍の様子を見ることができて参考になった」、「登壇者全員の熱意が伝わってきた」、「自分のモチベーションが上がった」、「気づきがたくさんあった」、「自分は何ができるのかを考えていきたい」、「勉強になった」などの感想を頂きました。

Zoomでミーティングをしたり、ちょっとしたオンラインクラスをしたりはしていましたが、参加人数が多くなると、全体の雰囲気が会場でお話しするのと違って伝わってきにくく、どの登壇者の方もお話しすることに慣れているとは言え、緊張したと言っていました。

私も緊張していました・・・。翌朝、何故か、腹筋が筋肉痛になっていて、お腹に力を入れて研究会に参加していたのかも知れません(笑)。

この後、登壇パネラーの皆様とZoomで研究会のお疲れ様ミーティングです。また、次回の研究会に向けて反省点、改善点を出し合いながら、次につなげていきたいと思っています。

また、次回も素敵な登壇パネラーの方々に登場してもらいたいと思っているので、現役の指導者でなくても、研究会の案内を見て興味あるな~って思うテーマがあったら、是非、参加してみてください。

KJLTIA主催の幼児日本語教育研究会は、日本語で”幼児”とついているので誤解を招きやすいのですが、Kids Japaneseになるので、乳児も幼児も児童も含んでいます。KJLTIAの幼児日本語教師養成コースを取得していなくても、他社のコース取得者でも、子育て中の保護者の方でも興味がある方は、参加できますので、次回、是非、ご参加ください。

登壇パネラーの皆様、そして研究会に参加してくれた皆様、本当にありがとうございました。皆様のおかげでこの研究会が成功したと思っています。

これからもみんなで一緒に高め合いながら頑張っていきましょう!!

2021年の幼児日本語教師養成コースのスケジュールが出ています。興味がある方は、こちらにお問合せください。2021年最初の開催日は、1月4日になります。