特集1:日本語補習授業校の新設クラスの立ち上げ – イタリア在住プロ認定幼児日本語教師の挑戦 !
新年あけましておめでとうございます。新しい年が皆様にとって幸福で平和な一年となりますようにお祈り申し上げます。
また、元日に発生した能登半島地震災害により被害を受けた方々に、心からお見舞い申し上げます。どうかご無事と、一日も早く日常生活が戻りますようお祈りしております。お力になれることがあれば、お知らせいただければ幸いです。
新年のスタートは日本では大変な出来事となりましたが、皆様と共に困難を乗り越え、明るい未来に向かって進んでいけることを願っています。どうぞお身体を大切に、お気をつけください。
2024年最初の幼児日本語教師の特集
今回の特集では、イタリアで活躍するプロフェッショナル認定幼児日本語教師に焦点を当て、2022年に新設されたミラノ⽇本語補習授業校の準備クラス「あそんでまなぼう!にほんごクラス」の立ち上げからクラス運営までのエピソードをお届けします。
新しいクラスや教室、カリキュラムをスタートさせるプロセスは、ゼロからのスタートであり、時間と労⼒がかかり、多くの困難に⽴ち向かいながら築き上げていくものです。多くの⽅が、幼児⽇本語教師としての夢を追い、幼児日本語教師養成コースを修了し、自分の教室を持ちたいと考えていることでしょう。今回の特集は、お教室の開講を検討している幼児⽇本語教師の⽅々にとっての貴重なアドバイスとなるでしょう。また、お子様の日本語教育をどうするか検討されている保護者にとっても、お⼦様の⽇本語教育に関する選択肢や、信頼できる幼児日本語教師を⾒つける⼿助けとなることを期待しています。
イタリア・ミラノ⽇本語補習授業校では、毎週⼟曜⽇に⾏われる⽇本語補習授業が、地域の⼦供たちに⽇本語と⽂化を教えています。その中でも2022年に新設された「あそんでまなぼう!⽇本語クラス」の⽴ち上げから担当するプロフェッショナル認定幼児日本語教師である⼤橋先⽣に、幼児日本語教師としての活動や幼児⽇本語教育についてインタビューしました。
インタービュー目次)
- 大橋澄子先生:イタリア・ミラノ在住、プロフェッショナル認定幼児日本語教師
- 幼児日本語教師として活動しているミラノの⽇本語補習授業校は、どんな学校ですか?
- どんなレッスンを⼼がけていますか?-効果が⾒られたアプローチはありますか?
どのような流れで新設クラスに関わることになったのでしょうか?また、どんな準備をしましたか?-
- ⽇本語クラス1周年を迎えたということですが、⽣徒たちの成⻑と⽇本語の上達は、どうでしたか?
- ⼦どもたちの楽しい反応、印象的な瞬間をおしえてください!
- ⼤橋先⽣からイタリア・ミラノ周辺で子どもの日本語教育を検討している保護者へメッセージ
大橋澄子先生:イタリア・ミラノ在住、プロフェッショナル認定幼児日本語教師
⼤橋先⽣とKJLTIAとのご縁は8年前にさかのぼります。2015年、⼤橋先⽣はKJLTIAの幼児日本語教師オンライン基礎コースに参加し、その後2021年にはアドバンスコースも受講。基礎コースとアドバンスのコースを通して、彼⼥は幼児⽇本語教育における専⾨知識とスキルを⾝につけ、2021年にはKJLTIAの幼児日本語教師指導者認定試験を受験しプロフェッショナル認定を受け、新たなステージに挑戦しました。彼⼥がミラノで展開する「あそんでまなぼう!⽇本語クラス」の舞台裏に迫ります。
幼児日本語教師として活動しているミラノの⽇本語補習授業校は、どんな学校ですか?
現在、幼児日本語教師として活動しているミラノ⽇本語補習授業校は、ミラノ⽇本⼈学校の校舎を借りています。毎週⼟曜⽇の15時から18時まで、12クラスにわたり児童・⽣徒たちが国語を学びに訪れます。開講しているクラスには、⽇本語クラス、幼稚部、⼩学部、中学部、⾼等部のクラスが含まれ、⽣徒数は120⼈以上にのぼります。興味深いことに、ミラノ郊外やスイスなど遠⽅から通う⽣徒もおり、親御さんたちは⽇本語教育に熱⼼で、学校はとても活気にあふれています。
担当しているクラスは?
⼤橋先⽣が担当している「あそんでまなぼう!にほんごクラス」は、2023年4⽉時点で8名の⽣徒が在籍しています。このクラスには4歳児と5歳児がおり、そのうち2⼈は⽇本⼈の親を持つ⼦供たちで、残りの6⼈はイタリア⼈と
⽇本⼈のハーフです。
クラスのコンセプトや⽬標はありますか?
「あそんでまなぼう!にほんごクラス」は、その名の通り、遊びながら⽇本語を学ぶというコンセプトのクラスです。このクラスでは、補習校の幼稚部に進む前に、ひらがなを読むことを⽬標としています。
特筆すべきは、このクラスには⼊学時の⾯接や試験が⼀切ないことです。4歳になり、⽚親が⽇本⼈か⽇本国籍を持っているお⼦さんであれば、年度の途中でも⼊学が可能です。補習校では幼稚部からの⼊学や編⼊には、⾯接や⾳読のテストなどがあるため、⽇本語が弱いお⼦さんは難しい場合もあります。このクラスでは、そういった制約を取り払い、誰もが気軽に参加できる環境を提供しています。
⽇本語が不得意な⼦供たちでも、このクラスを通じて補習校の上の学年へ進学できる機会を増やしたいという想いから、校⻑先⽣と協議し、開講に⾄りました。これにより、全てのご家庭にとってハードルの⾼い⼊学試験などがないため、多くの⼦供たちが⾃分のペースで⽇本語を学ぶことができます。
また、毎回の保護者へのお便りも重要視しています。ご家庭でのサポートがなければ、お⼦さんの⽇本語の成⻑は難しいものです。ですので、どのような点に気を付けてほしいか、どのようにサポートすると効果があるのかなど、幼児⽇本語教師の視点から親御さんへのアドバイスも含め、丁寧にお知らせしています。
カリキュラム、指導計画、教材はどうしていますか?
カリキュラムと指導計画は独⾃のもので構築しています。年間指導計画などの⾻組みは⼤まかに定め、具体的な
内容は⽉や週単位で⼦供たちに合わせて計画し、それに基づいてレッスンの進⾏を考えています。
KJLTIAのひらがなカードは、教材として⾮常に活躍しています。さらに、ひらがな表を⼤きく拡⼤して⿊板に貼り、その上にラミネートしたひらがなカードを配置するなど、⼯夫を凝らしています。折り紙はイタリアではほとんど⼊⼿できないため、帰国時にたくさん持ち帰り、積極的に活⽤しています。補習校ならではの恩恵もあり、豊富な紙芝居や絵本が揃っており、読み聞かせにも⼤いに役⽴っています。昨年は保護者の⽅からひらがなの積み⽊やひらがなカードを寄付していただいたりもあり、それらを有効に利⽤しています。運筆プリント類については、インターネット上の無料教材を活⽤させていただいています。
どんなレッスンを⼼がけていますか? 効果が⾒られたアプローチはありますか?
特に⽇本の歌と⼿遊びをたくさん取り⼊れています。毎⽉、⽇本の季節や⾏事に沿った歌を⼦供たちが楽しめるよ
う、⼿遊びとともに取り⼊れています。⽇本では当たり前に親しまれている童謡や⼿遊び歌などが、こちらではなかなか聞く機会がありません。そのため、⼦供たちが積極的に歌ったりすることを意識的に促しています。⽉末には歌詞や振り付けを覚え、⼝ずさむようになります。これにより、歌を通して徐々に⽇本語を⼝にでき、⾃信につながっていくようです。親御さんもこのクラスを通じて家庭で歌ったり、主体的に⽇本語を話すようになったとの嬉しいコメントをいただくことがあります。折り紙も毎回のレッスンで⾏い、⼦供たちはそれを持ち帰ってから⾃宅で同じ折り紙を折ってきて、次のレッスンで披露したり、学校で⾃慢したりする姿が⾒受けられ、学校を卒業した後もこのクラスでの経験が⼦供たちに影響を与えていることを感じています。
どのような流れで新設クラスに関わることになったのでしょうか?また、どんな準備をしましたか?
補習校では、以前に⼩学部や中学部で教えた経験がありましたので、校⻑先⽣との繋がりが⼤きな影響を与えました。補習校を離れた後、アドバンスコースを修了し、幼児日本語教師指導者認定の資格試験を受験するにあたり、校⻑先⽣に幼児⽇本語指導経歴証明書の指導歴の書類にサインをお願いしたところ、私が幼児⽇本語教師の勉強をしていることを知っていただきました。その後、クラスの⽴ち上げにおいて、ありがたく私に声をかけてくださり、再び補習校での活動が始まりました。もともと⼦供が好きで、⽇本でも⼦供に関わるアルバイトなどの経験はありましたが、特定の⼦供関連の職に就いておらず、教員免許も持っていませんでした。ただ、補習校では幸いにも教員免許は必要なく、⼦供たちに⽇本語(国語)を教える機会にめぐり合え、それが今に繋がっていると感じています。
⽇本語クラス1周年を迎えたということですが、⽣徒たちの成⻑と⽇本語の上達は、どうでしたか?
実際にはクラスが開講して1年半が経過してしまいました。それでも、⼦供たちの成⻑を実感しています。開講当初は⽇本語がほとんど話せず、理解も難しい⼦供たちも、この春には無事に全員が幼稚部や⼩学部への試験に合格し、⼊学することができました。この成果にとても嬉しく思っています。(補足:インタビューは2023年5月に行われました。)
クラス運営の困難と挑戦について教えて下さい。
いっぱいありました(笑)。まず、毎週保護者へ配布する「お便り」はいつも苦労しています。お便りは重要な親御さんへのコミュニケーションの⼀つと考えて、⼦供達の総合的な様⼦も報告したりはしていますが、そのほかできるだけ、家庭での⽇本語のサポートがいかに⼤切か、どうすれば⽇本語が上達していくか、などのアドバイスを私なりに書いて配っています。
流⽯に毎週のことになるので、ネタも尽きたり疲れてきて、連絡事項が主体でもいいか、と思っていると、親御さんから「毎週楽しみにして読んでいます!」とお声がけいただいたりするので、やはり、また頑張って書こう!という気持ちになって、いろいろなネタを探して、また⾃分なりに勉強して書くことにしています。
特に⼊学したての親御さんによっては、思いっきりはちゃめちゃな⽇伊ミックスで⼦供に話しかけていたり、普通にイタリア語で会話をしていたりするので、お⺟さんからしっかりと指導(というと偉そうですね、すいません)していくという⾵に考えています。
その他、昨年度までは補習校で担当する授業3時間のうち、1時間半に5名の前半クラス、残りの1時間半に5名の後半クラス、という感じで2回の同じレッスンを続けてやるという感じでしたので、ぶっ続けで授業の最後には毎回ぐったりしていました(笑)。⼈数が5名最⼤ということもありアシスタントの先⽣もいなかったので、⾃分がおトイレに⾏くのもずっと我慢してたりしました。
去年は4歳から6歳の⼦供たちがいましたので、複式学級で年齢の差があり、同じようにレッスンをするのは難しかった部分もありました。ですが、⼤きな⼦には、⼩さな⼦の制作の時のお⼿伝いをしてもらうなどして、むしろこちらも助けてもらいながら、なんとか乗り越えてこれたと感じています。
⽴ち上げた当初、元気が有り余る⼦に⼿を煩わせられて、どう対処して良いか⼤変悩んだ時には、KJLTIAの⾨井先⽣にも相談に乗って頂いたこともありました・・・。本当にありがとうございました!!
KJLTIA: 新しいクラスが開講したばかりの時は、⼤変でしたね。幼児日本語教師も⼦どもたちもお互いのことをよく知らない者同⼠ですから、幼児日本語教師も個々の⼦どもの対応に悩んでしまうのはよくある話です。
また、幼稚部の場合、初めての集団⽣活という⼦どもも少なくありません。⺟⼦分離が上⼿くできず、レッスン中にずっと泣いている⼦がいたり、お⽚付けができない⼦、他のお友達とシェアして教材を使うことができない⼦など、多様な⼦どもたちがいるので、最初は幼児日本語教師自身も対応に追われて疲弊してしまうこともありますよね。
⼦どもたちの楽しい反応、印象的な瞬間をおしえてください!
レッスンやイベント中、特に印象的だったのは、⼿遊び歌の活動です。⽉ごとのテーマに合わせて⾏いますが、「オニのパンツ」と「お化けなんてないさ」は特に⼼に残ります。⼦供たちは「お化け」や「パンツ」といった⼤好きなキーワードに⼤いに興奮し、⼝ずさんだり、⾝体で振り付けをして、楽しそうに参加しています。その様⼦は、時折シーズンに関係なく歌ってくれたり、⾃発的に再現してくれることもあり、本当に嬉しい瞬間です。
KJLTIA: 「オニのパンツ」のお歌は、イタリア民謡『フニクリフニクラ』が原曲なので子どもたちにとっては馴染みのある曲でしょうし、そこに「パンツ」が加わることで大盛り上がりする子どもたちの光景が浮かんできます。こちらオーストラリアでもイタリア人経営のイタリアンレストランに行くと『フニクリフニクラ』の曲がBGMで流れていることが多いです。この曲を聴いてしまうと、つい口ずさみたくなりますが、頭の中では「おに~のパンツは」と歌い出すので会話が入ってこなくなります(笑)。
⼤橋先⽣⼿作りのクラスアルバム
学年末、「あそんでまなぼう!にほんごクラス」から巣⽴っていく⼦どもたちの思い出のアルバムが担任の⼤橋先⽣から配布されているそうです。
⽣徒たちのお名前や顔写真、そしてクラス内の活動の様⼦がわかる写真が掲載されていて、クラスのお友達と⼀緒に⽇本語をあそびながら学んでいる様⼦が伝わってくる素敵なアルバムになっています。
⽣徒たちの写真や名前が記載されているため、中⾝はお⾒せできませんが、保護者にとっても嬉しい思い出のアルバムになることでしょう。この後、⼦どもたちはミラノ⽇本語補習授業校の幼稚部へ進級していきます。
⼤橋先⽣からイタリア・ミラノ周辺で子どもの日本語教育を検討している保護者へメッセージ
「⽇本語に⾃信のないお⼦さんでも、⼀緒に遊びにきてください!楽しみながら⽇本語を学んでいきましょう!」
と、このクラスへの参加を呼びかけています。ミラノ⽇本語補習授業校へのお問い合わせ先も提供されています。
ミラノ日本語補習授業校へのリンクは、こちらから。
KJLTIA: ミラノ⽇本語補習授業校「あそんでまなぼう!にほんごクラス」での⼤橋澄⼦先⽣の幼児⽇本語教育への熱意と努⼒が、⼦供たちの成⻑と学習への興味を育んでいます。⼿遊び歌や楽しいアクティビティを通じて、⼦供たちが⾔葉と⽂化を楽しみながら学ぶ様⼦が伝わってきました。この取り組みが、将来的なバイリンガル教育や国際交流に寄与することでしょう。
幼児日本語教育や幼児日本語教師に興味をお持ちの方は、KJLTIAへお問い合わせください!
今回、イタリア・ミラノ⽇本語補習授業校のご協⼒により、⼤橋先⽣の活躍についてご紹介させていただきました。ご協⼒いただきありがとうございました。これからも貴校のますますの発展を⼼よりお祈り申し上げつつ、ご協⼒に深く感謝いたします。
(注)ご迷惑になりますので、ミラノ⽇本語補習校や⼤橋先⽣への幼児⽇本語教師養成コースやKJLTIAに関するお問い合わせは、控えて頂きますようお願い申し上げます。
次回の特集は、ミラノ日本語補習授業校「あそんでまなぼう!にほんごクラス」の担任であるプロフェッショナル認定幼児日本語教師の大橋澄子先生に、幼児日本語教育の専門性についてのインタビューをお届け予定です。
お楽しみに!
KJLTIAの幼児⽇本語教師養成コースに関するお問い合わせ – 幼児日本語教師協会 (youji-nihongo.com.au) は、こちらから。
1月の幼児日本語教師養成コース – 幼児日本語教師協会 (youji-nihongo.com.au)
2月の幼児日本語教師養成コース – 幼児日本語教師協会 (youji-nihongo.com.au)
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