文字と言語音の関係

文字と言語音の結びつきは、音符とドレミファソラシドの音の関係と共通している!

楽器演奏ができる人は、楽譜を読んで演奏します。音楽もある意味、言語と同じだと思いませんか?音符が文字の役割をしていて、楽譜は文章や物語と言えるのではないでしょうか。五線譜に並んだ音符を見て、ドレミの音階に変換できない人は、楽器を演奏することも難しいかと思います。楽譜が読めない人にとって、五線譜に並んだ音符はどんな風に見えているのでしょう。おたまじゃくしが並んでいる?模様?人それぞれ感じ方は違うにしても、音楽を学んできた人は、音符と音の結びつきを理解し、楽譜が読めるようになって楽器の演奏ができるようになります。

日本語学習で考えてみると、平仮名の文字と言語音の結びつきを理解することで、平仮名で書かれた文が読めるようになったり、書けるようになったりする。平仮名を文字と認識していなかったら、言語音との結びつきが確立されていなかったら、平仮名で書かれた文を読むことも書くこともできないということ。

楽譜を読むためには音符と音の関係をしっかり結び付けることが基本中の基本。ドレミファソラシドの音を知らなければ、音符を見ても、単なるおたまじゃくしみたいな記号でしかありません。また五線譜上のドを表す音符を見て、【ド】という音に変換できた時、その音符を読んで演奏ができるということ。

平仮名は、どうだろうか?【あ】という文字を見た時に『あ』という言語音に頭の中で変換されているのであれば、その人は【あ】の文字と『あ』の言語音の結びつきが確立されているということ。この文字と言語音(音韻)の結びつきができていないと、読み書きを行うのは難しいのです。

何が言いたいかというと、文字の読み書きに先走る指導者や保護者がいるけれども、文字と言語音(音韻)の結びつきがしっかりできていないと、いくら子どもに平仮名を読ませようとしても、書かせようとしても、その場限りだということです。五十音表を『あ』から順番に繰り返し読み上げることだけではなく、ランダムに文字を読んでみたりすることも必要です。呪文のように唱えているだけの「あいうえお」が言えても、文字と言語音の結びつきができていない子は、ランダムに提示された文字を見て、読み上げることができません。

幼児日本語教育のアプローチとして、平仮名や片仮名の文字と言語音の結びつきを強化するようなアクティビティを考えてみると良いですね。

子どもって文字が何のためにあるのか、どういう使い方をするのかって知っているのかしら?

大人は文字の便利さ、使い方、役割っていうのを理解しているからこそ、何かを伝える時、書き留めておきたい時に文字を使用しています。

例えば、上記で出てきた楽譜を読む時に、音符が読めない人は音符の下にカタカナで「ドレミ」の音階を記載する人がいますよね。これは、楽譜を譜読みする時に、ドレミの音階を聞いたり、自分で時間をかけて音符を1つずつ読みながら日本語のカタカナでメモするという作業。ピアノを習っている幼稚園生がスラスラと楽譜が読めないからと言って、楽譜の音符の下にカタカナでドレミの音階をメモするのか・・・。おそらくしていないでしょう。何故?まだカタカナが書けないという意見もあるかも知れません。それなら、平仮名が書けるなら平仮名で書いても良いですよね?しかし、そういうことではありません。幼児期はまだ文字の役割をきちんと理解しておらず、使い方もいまいちわかっていません。もしかすると文字を読みあげることができるかも知れませんし、文字を書くこともできるかも知れません。しかし、読んで理解しているのか、何かを伝えるため、文字で残しておきたいから書いているのかというと、ただ文字を読んだだけ、ただ書いただけというのが幼児期というレベルです。もちろん個人差があるので、早い段階から文字に興味を持ち、文字の使い方を獲得できる子どももいるかも知れませんが、文字を知ることでこんなことがわかるんだよ、文字が書けることでこんなことができるんだよっていう感動を子どもに与えてあげられるようなアプローチがあると、文字そのものに興味を持って、読み書きに繋げていけるようになると思います。

日本語の平仮名と片仮名の文字の読み書きに必要な条件としては、文字と言語音の結びつきをしっかり確立すること。幼児日本語教師の皆さんは、どんなアクティビティをしたら良いのか、考えてみましょう。

KJLTIAの幼児日本語教師はハイブリッドな専門職!

KJLTIAの幼児日本語教師養成コースでは、「幼児教育」+「複言語教育」+「日本語教育」を学びます。

子どもに日本語を教えてみたいというあなた、是非、幼児日本語教師養成コースで幼児日本語教育について学んでみませんか?

幼児日本語教師養成コースについては、こちら

お問合せは、こちら

KJLTIA(幼児日本語教師協会)のSNS

KJLTIA(幼児日本語教師協会)Facebook

KJLTIA(幼児日本語教師協会)Instagram

KJLTIA(幼児日本語教師協会)Youtube

<KJLTIAのYoutubeチャンネル> チャンネル登録してもらえたら嬉しいです。

KJLTIA(幼児日本語教師協会):『ようじにほんごチャンネル』 Youtube

あいうえおのうた

あいさつのうた

ようびのうた

1カ月の数え歌

このどうぶつだ~れ?Pre-A1

このどうぶつだ~れ?A1

にほんごクイズ Pre-A1

にほんごクイズ #2 Pre-A1

にほんごクイズ A1

平仮名マグネット

文字環境を整えることが、文字への興味に繋がる!

子どもに文字に興味を持ってもらうためには、どうしたら良いのだろうか?

子どもが初めて何らかの文字を見た時、どう思うのだろうか。日本語の文字を初めて見た時、これが日本語ってわかるのだろうか?文字と認識しているのかな?

図形の認識能力というのは、生後1週間の赤ちゃんでも持っている能力だと研究でわかっています。赤ちゃんは、生後まもなく五感を使いながら色んな刺激を通して常に学習しています。赤ちゃん用の玩具でも図形を使ったものが多く、型はめの玩具、積み木、かたちを扱った絵本など、色んな図形を見て図形認識力を高めていきます。これが後の文字の識別に活きてきます。色んな図形をよく見て観察する能力が身に付いていかないと、文字の識別は難しいというのは想像できるかと思います。平仮名で言えば「あ」と「お」、「し」と「つ」、「れ」と「わ」など似ている文字がありますね。これら1文字ずつをしっかり目で見て観察して識別する力が無いと、「あ」も「お」も同じように見えるし、「わ」も「れ」もどこが違うのかわからないとなってしまいます。文字も図形みたいなもの!乳幼児にとったら初めて見る文字は図形でしかありません。将来、文字が読めるようになっていくためのトレーニングは、赤ちゃんの頃から始まっているとも言えます。図形、写真、イラストだけでなく、文字もたくさん見せていくと良いですね。

家庭内の文字環境を整えていこう!

乳児の頃からの絵本の読み聞かせが重要なのは、皆さんもご存じの通りかと思います。非日本語圏に住んでいるのであれば、意図的にでも日本語の文字を子どもの目につくように文字環境を整えていくことも大事なポイントになります。

「読み書き」を一緒に考えてしまう方がいるかも知れませんが、「読む」「書く」は別々のスキルになります。一緒に考えず、分けて考えるようにしていきたいですね。

非日本語圏に生活していると現地の幼稚園や小学校に入学して、現地語の文字学習が始まる前に日本語の文字学習を始めたい、できれば就学前に日本語の読み書きを・・・と焦る親御さんもいるかも知れません。しかし、先ずは「読み」からです。読むことができるようになってから、書くことをはじめていっても遅くはありません。読めない文字を書くことって、単にコピーしているだけの作業です。しっかり平仮名や片仮名が読めるようになってから、書く練習に進んでいくと良いでしょう。

日本語っで珍しい言語です!!

日本語は、『ひらがな』、『カタカナ』、そして『漢字』を文章の中で併用するとても珍しい言語です。

日本語には、【表音文字】と【表意文字】の2タイプがあるのを知っていますか?

【表音文字】とは、『ひらがな』と『カタカナ』のこと。

【表意文字】とは、『漢字』のこと。

【表音文字】は、見た通り『音』を表す文字です。『ひらがな』と『カタカナ』の清音は、1文字1音とわかりやすいですね。例えば、「りんご」の音韻は『り』『ん』『ご』の3つの文字と同じ数なので3音となります。一文字ずつをきちんと文字を追って発声できれば、「りんご」と読み上げることができます。片仮名も同じですね。「リンゴ」の一文字ずつを音で表して発声すれば「リンゴ」になります。だから、日本語のひらがな、カタカナは、アルファベットを使う言語よりも簡単に読めるようになってしまうのです。

日本在住の幼稚園児や保育園児が小学校入学前に平仮名や片仮名を読めるようになる時期が早まっているという研究データが出ています。どうしてでしょう?

そういうと、幼児教育で「平仮名のなぞり書き」や「ワークシート」を取り入れているんでしょ~!って言われそうですが、いいえ、そうではありません。

文字環境を整えることで子どもが文字を目にする機会が増えていきます。日本で生活している子ども達は、私たち親世代が子どもだった頃と比べると、生活の中で文字に触れる機会がとても多く、充実していると言えます。特に日本では、生活の中で日本語だけでなく、アルファベットにもたくさん触れられる環境になってきていますよね。幼稚園児や保育園児が誰かに教えてもらったわけでもないのに、いつの間にか、平仮名の文字を覚えたり、「先生、これAって言うんだよ~」って自信満々にアルファベットの読み方を教えてくれたりします。

非日本語圏で日本語の文字を見る機会は、どのくらいあるでしょうか。日本人が多く訪れる観光地であれば、もしかすると日本語の案内があったりするのかも知れませんが、日本を一歩出れば、日本語というのは少数言語となります。非日本語圏で日本語表記と言えば、日本食レストラン、お寿司屋さん、ラーメン屋さんくらいしかないっていう町もあるかもしれません。日本に住んでいる子どもであれば、自分の名前に使われている文字を外で発見すれば、「はなちゃんの”は”があった~」って嬉しそうに教えてくれたりしますが、非日本語圏ではなかなかそういう話は聞かないですよね。日本語の文字に触れる機会が圧倒的に少ない海外在住の子ども達は、本当に意図的に文字に触れる機会を作らないと、文字に興味を持つことが難しくなります。

それでは、どうしたら良いのかしら?

やはり家庭内で日本語の文字環境を作る必要があるのかなと感じます。例えば、ひらがな五十音表を壁に貼ってみたり、絵本の表紙が見えるように本棚の使い方を工夫してみるのも良いですね。

日本だと子どもの持ち物に日本語で記名がしてあります。日本の幼稚園や保育園の園内では、自分の名前やお友達の名前が色んなところで見ることが出来ます。靴箱、カバンかけ、ロッカー、コップ、ハサミ、粘土板、クレヨン、名札、通園バックなど、色んなところに記名がしてあるので、文字に触れる機会がたくさんあります。

海外在住の子ども達はどうでしょうか?家庭の靴箱、カバンかけ、クローゼット、子どものカバンなどに日本語で記名してあるでしょうか?おそらくしていないですよね。

子どもが家庭内にある色んなモノの名前を発するようになってきたら、例えばテレビに【テレビ】と書いたメモやポストイットを貼ったり、冷蔵庫に【れいぞうこ】と日本語で書いて貼ったり、ちょっとだけ工夫すると、意図的に文字が目に着くようになります。子どもが「これなあに?」って聞いてきたら、興味を持ちだしたなってことで、「れいぞうこ」って書いてあるよって読んであげると良いですね。その時に、1文字1音であることを伝えるために文字を指で示しながら「れいぞうこ」って読んであげると、「れいぞうこって文字でこう書くのか~」って発見してくれます。

平仮名や片仮名は、表意文字なので、音を表しているというのは前半に伝えた通りで、子ども自身が自分の発する「れいぞうこ」の「れ」の音が【れ】と文字で表現できると理解してもらうことって、文字に興味を持ってもらうための第一歩になります。

海外生活の場合は家の中に日本語の文字環境を意図的に作り出す必要があるので、ポストイットやメモを家中に貼るってインテリア的にどうなの??って悩むところもあるでしょうね。先ずは、子ども部屋からはじめてみても良いのではないでしょうか。ひらがな表、カタカナ表、【ドア】【かべ】【まど】【つくえ】【いす】など、子どものお部屋の中にある家具などに『名札』を付けてあげると良いですよね。

ゲームをしながら文字の識別能力を確認していこう!

貼ってある家具などの名札と同じ文字カードを作成し、『同じ名前を探そうゲーム』を家族みんなで取り組んでみても良いと思います。まだ文字が読めなくても、読める親御さんが読んであげたら良いですし、文字カードと同じ形で書かれた名札の貼ってある家具をお部屋から探すことからスタートしていくと良いのではないでしょうか?何度か繰り返して行い、慣れてきたら「引っかけ文字カード」を用意すると良いですね。例えば、【つくえ】を【つしえ】とか似ている文字を使った文字カードを入れておいて、書かれた文字をしっかり識別して「違うな」って子ども自身が気が付いてくれるように導いていきたいですね。

人間は、乳児期から色んなモノを見て識別していきます。形が違うということ、色が違うということ、大きさが違うということ、顔が違うということ。色んな違いに触れることで、観察力が研ぎ澄まされ、識別する能力が長けて行き、やがてその能力が学習へと繋がっていくと考えると、乳児期から色んなモノを見せていきたいですね。

日本に住んでいれば、絵本が平仮名だけで書かれていたとしても、生活の中でカタカナも漢字も目にすることができます。海外で育つ子どもが日本語の読み書きでつまづく大きな原因として、日本語の文字環境の乏しさがあげられます。ひらがなとカタカナがしっかり読めないのに漢字が導入されたら、混乱してしまいます。読めなくても漢字は文字として認識してもらうために早い段階から見せていくことは大事ですが、書かせるのは平仮名とカタカナがしっかり読めて書けるようになってから、漢字の書き方練習を始めていきたいですね。書き方は本当に読みが出来てからで大丈夫です。無理に書かせて日本語が難しい、日本語の勉強が嫌って嫌悪感を持たせることの方が怖いです。子どもは、読めるようになったら書いてみようと自ら挑戦しようとするので、焦らずゆっくり進めていきましょう。

子どもの文字環境を整えて、文字に興味を持たせ、やがて読みと書きへとつなげていけるよう、導いていけるといいですね。

10月の幼児日本語教師養成コース(オンライン基礎コース)の受講申込を受け付けています!

2021年10月18日スタート 幼児日本語教師養成コース(オンライン基礎コース)のご案内 – 幼児日本語教師協会 (youji-nihongo.com.au)

あなたも幼児日本語教育を学んでみませんか?